自己暗示とか自己催眠とか、そんなオカルトに心惹かれます。(自己催眠・心を変える技術、読書感想文)
自己暗示とか自己催眠とか、いかにもインチキくさいというか「そんなオカルト、ありえません!」みたいなものに心惹かれます。
例えば、水素水とか。
科学的に水素を取り入れたときの抗酸化の効果と、心理的な問題がごっちゃにされているのと、水から水素を取り入れるというのが果たして正しいことなのか(酸素はボンベから直接吸引しますよね。あれじゃない理由はなにかあるんでしょうか?)とか、水素なんて入ってないただの水による純粋な詐欺とが複雑に絡み合って、それをよく知らない外野がわけもわからないまま空気に流されて叩いている。
この感じ、社会の縮図というか、人間の醜さというか、とにかくそういうものを感じて、なんとも言えない愛しさと切なさと心強さがあります。
一手目から盛大に話がそれました。
そんな感じでどんなオカルトが飛び出してくるのかと思っていたのですが、意外にも心理的な観点から効果ややり方を解説している、すごくまともな本でした。
以下メモ。
潜在識だとか無意識だとかの話。
潜在意識、無意識、似たようなものだが、これに寄り添うことで思い通りの人生を送れる。
潜在意識で思っていること=自分の本当の気持ち。
理性的には間違っているものでも、例外ではない。
よって、何か大きなことを成し遂げるには、潜在意識を変えていくことで成功に近付ける。
誤解が多いこの手の話題、自己催眠を他者催眠と混ぜて考えている人がとても多い。
うさんくさいものと思われる人も多いが、自己催眠自体は心を安定させる心理テクニックにすぎない。
催眠術、自己催眠、他者催眠
自己催眠と他者催眠は区別されるべきもの。
催眠は、考えを一点集中することで実現させる。
他者催眠は催眠をかける人の声に集中することで実現する。
一方で自己催眠は自分の考えに集中する、それが違い。
わかりやすいところでは、自己催眠は禁止暗示が成立しない……というのも、「考えない」と考えることは不可能だから(潜在意識は否定形で考えられない)。
ただしくっきりと分けることは難しい面もある。
たとえば、「誰かに言われた」ことを強くイメージすれば、他者催眠寄りの自己催眠ということになる。
催眠術の効果について
悩みがなくなるのではなく、悩みに対する葛藤がなくなる。
不安で動けなくなるのではなく、不安があることを受け入れられる。
緊張を楽しむとかそういう心境に近付ける。
雑念がなくなり、集中力が高まる。
よく「催眠術で記憶力は高まるか?」と聞く人がいる。
催眠術で集中して学習することができれば、結果的に、記憶力というか学習効果は高まる。
それだけの話。
よけいな不安もなくなるので、取り越し苦労や持ち越し苦労がなくなる。
自己催眠によって大きな視野で物事を見れる、自分が不安にあるのはそれだけ危険なことをしているからだ、と受け入れられる(スキージャンプの例)。
利己と利他の偏り(バイアス)を外す効果もある。
よく言う、「失敗したらどうしよう」なんていうのは「自分を傷つけたくないからだ」なんていうけど、それは利己に偏っている(=バイアスがかかっている)ということ。
逆に、自分を省みずに自分を捨てるような勢いで誰かに尽くしてしまうとかいうのは、利他に偏っているということ。
バイアスの悪影響
本人がよければそれでいいのでは?
なんて思われがちだが、バイアスが偏ると周囲が反対側に傾いてバランスをとるという現象が起きる。
例えば利他に偏って、自分の評価が低く、なんでもやってくれる人が近くにいると、周囲の人はその人になんでもやってもらう、利己的な価値観に変化していく。
また、心の中で葛藤があると、そこにとらわれてしまい大きな視野で物事を見ることができなくなる。
そのうえ、自分が狭い視野に陥ってしまっていることがわからなくなる。
自己催眠の方法
ざっくりと以下の方法が紹介されている。
- 力を入れてから抜く
- 四肢が重いというイメージを感じる
- 頭から悪いものが足に抜けていくイメージを感じる
- 観念運動、無意識が体を動かす方法
- 連続観念運動
- 呼吸を数える
どの方法でも良いが、終わるときは終わることを宣言して、手足を屈伸させて力が戻ったことを確認してから終える。
環境を選ぶ。
気が散らない場所でやる。
同じ音楽や匂いなどを使うのも条件付けとして効果がある。
人によっては、集中すべきことに集中するトレーニングを日常で行うことが必要になるかもしれない。
恐怖突入
自己催眠の終わりはあるのか、と聞く人がいるが、そういう人は考え方が違う。
そもそも自己催眠がなんで必要かというと、潜在意識と意識が喧嘩してしまうからで、それが折り合いをつけられるようになればいい。
無意識に「いやだ」と思うことを納得させることが、要するに自己催眠である。
「俺はできる」と言い聞かせるのも自己催眠と言えるし、実際にそれで難しいことに挑戦していけるなら、それでなんの問題もない。
ぶっちゃけると、勇気を出すことができるなら自己催眠なんて必要ない。
自己催眠の生かし方は、心理的な抵抗のあることに少しずつ挑戦していくこと。
むしろ実践の方が、自己催眠をするよりもはるかに価値がある。
人生は有限なので、できれば催眠なんかに頼らずにどんどん恐怖突入をするべき。
恐怖突入を繰り返すうち、そのうち自己催眠は自分の一部となり、別段の儀式も必要としなくなる。
負け癖がついてしまうため、恐怖突入をすると決めたときに設定した目標は変えないようにする。
潜在意識の仕様。
潜在意識には現在しかない(昔のことにいつまでも縛られることが可能)。
潜在意識は否定が通用しない(悪いことが現実になる)。
潜在意識は自他の区別がつかない(他の人への呪いは自分に跳ね返ってくる)。
潜在意識は現状維持しようとする(勝手知ったる不幸を望む)。
現状維持が働かない範囲をコンフォートゾーンと呼び、これを変化させていく。
これは残念ながら暗示だけでは変化しない、実践が必要になる。
21日繰り返すと習慣になる。これを利用していく。
自己啓発の落とし穴
自己啓発書「成功する姿を明確にイメージしましょう!」
読者「もともと成功する人だったんでしょ?」
この本「せやで」
自己暗示で思い描いたことは、自分の能力の範囲でしか実現しない。
できることだけやろうとする。
潜在意識はリソースが揃うことを待ってくれない。
成功イメージに怠慢的な要素を入れると、それだけが実現する。
僕「お金持ちになってなにもしないで暮らしたい」
潜在意識「お金持ちにはなれへんけど、なにもしないことならできるわ」
僕「なにもしたくない」
結局、能力を磨かないと実現するものも実現しない。
そして能力を磨くのは潜在意識ではなく、意識。
意識と潜在意識の役割分担が必要。
ただ、自己催眠によって、その役割分担をうまくこなしていくようにする、意識が学習することを潜在意識が手助けする、そんな状態にもっていくことは自己催眠で可能になる。
NIC成功法
人間の心は器のようなもの。
欠けてもそれを満たそうとする。
例えば家族がいると、家族それぞれに対応する器が心の中にできる。
で、そのなかの誰かがいなくなると、その器を埋めたくなって、別の誰かにその器の中身を見出してしまう。
親がいなくなって身近な頼れる人を親のように思うだとか、そういう心理。
これを利用したのがパターンニューロン、無意識の習慣。
染み付いた習慣は変えられない。
不幸探しはクセになる、じゃあ幸せになる習慣を身につけたら、嫌でも幸せになれるよね、という理屈。
じゃあ自分が幸せであることを発信し続ければいいのか?
かというと、話はそう単純ではない。
幸せな話って要するに、自慢話だから。
自慢話を聞いてもらうためには報酬を与えるなどの対価と一緒にしないと、そのうち、誰も聞いてくれなくなる。
自慢話を聞かされて嬉しい人は残念ながらいないから。
世の中ってそんなもん。
習慣はパターンニューロンを育てる
幸せになるパターンニューロンはどのように出来上がるのかといえば、そういう行動を21日間続けること。
21日間続けると習慣になって、やらないと気持ち悪くなる。
ちなみに、パターンニューロンが活動しなくなって21日間経つとやらないという習慣が身につく。
禁煙の場合、吸いたいと思わなくなって21日間経つと、吸わないというのが習慣になる。
この習慣になるというのは変化のこと。
人間は、変化に対して恐怖を感じるもの。
幸せになるのも恐怖が伴ってしまう。
なので、徐々に段階を経て変わっていくことが必要。
また、幸せの大きさよりそれを味わう時間の長さを重視する。
イメージの中で段階を経て、「大丈夫」と思えたら、そこで即座に現実で体験する。
これをしないでいると、イメージは弱くなってしまい、そのうち元に戻ってしまう。
ジャンプでなく、背伸びで達成できる目標を少しずつ達成していく、その習慣を身につければ成功が近づく。
幸せになる=変化=恐怖。
自分が幸せになるというのは、自分が変化するということ。
ということは、それまでの自分ではなくなるということ。
ということは、周囲の人の心の器に存在する自分ではなくなるということ。
ということは、自分が変化するというのは周囲の人にとっては望ましくないこと。
よって、自分の周囲は味方であれ敵であれ、自分の変化に反対する。
この対策としては、秘密主義で他人を刺激しないようにするしかない。
また、秘密にしなきゃいけない、でも言いたい、じゃあ一刻も早く成功しなきゃ……という潜在意識が最後の突破力になる効果も期待できる。
幸せになるための方法。
リーディングシート
願望の確認
リソースの確認
価値の確認
最悪を想定する
制御要因の見極め
コントロールできない部分を作らない
本当に認めてもらいたい人を見つけたら、半分くらい成功したようなもの。
本当に心配しているのか、言い訳しているだけなのか、自分の心に問いかける、必要に応じて価値の確認をやり直す。
現実から足を離さない、プロジェクトを止めない。
可能性より確実性を重視する。
現実に基づいて行動を考える。。
人間には原因型と影響型がいる。
主体があるかないかということ。
成功するのは総じて原因型。
主体がなければ成功しない。仮にしても、すぐに引き摺り下ろされる。
むすび:痛いところをついてくる本。
というわけで、オカルトかと思っていたらすごい真面目な内容の自己催眠の本でしたとさ。
結局自分が頑張るしかないんだよね……わかっているつもりではありましたが、そんな淡い期待にざっくりとトドメをさしてくれる本でした。あいつ何度でも蘇るけどね。
それにしても、一番面白かったのはこの一文ですよ。
「家で瞑想や自己暗示ばかりしている人に、どうして自分を変えられるでしょうか?」
自己暗示の本がそれ言っちゃうかー、って感じ。
苦々しい笑いが出てきます。
興味が出たら、Audibleなら月額1500円で聞ける(初月無料、プライム会員なら3ヶ月無料)ので聞いてみてください。
4時間ほどの内容なので、3倍速なら1時間半もかかりません。
通勤に聴きながらでも、一日で聴けちゃいますね。
ちなみに僕は、SmartEverでだーっとメモを取りながら聴いてます。あとからEvernoteで書き直したり、書き直さなかったりですが。
ガチの満員だとメモを取る余裕もないので、聴いて終わりの本もありますけど、やらないよりはましかなーと思ってます。
こうして記事のネタにもできますし。