「バレンタインデー、おめでとうございます!」
しばらくの逡巡のあと、出たのは、そんなよまいごと。
いや、見栄を張りました。
マルの渾身のギャグ、だったんです。
だったんです、けど・・・。
あなたは、少しだけ首をかしげて・・・ニコリ。
困ったようにも、わかった風にも見える笑顔で、受け流します。
ああん、もう。
そんなふうにうまく受け流したふうを装うったって、おらが・・・じゃなかった。
マルが、どんなにニブチンだっていったって・・・わかっちゃうんですからね。
でも、そう思ってくれるんなら、いいです。
むしろ、そう思ってくれた方が、いいんです。
マルの「ほんとう」は、きっと、あなたには迷惑だから。
だから、この気持ちは・・・きっと、このまま、冗談として。
「ハートの形はルビィちゃんが作ったので、お星様の方は、オラが作ったんだ」
マルは、2つ、嘘をつきました。
1つは、あなたに。
本当は、どっちもマルが作ったんだ。
でも、恥ずかしいのと、なにより・・・やっぱり迷惑だろう、って思ったんです。
だから・・・ルビィちゃんの名前を、借りちゃった。
もう1つは、自分に。
これは、ルビィちゃんのと、同じ形。
だから、星型とは違う、ルビィちゃんと交換したのとは違うチョコを作った、ってことには。
ハートの形のチョコを作ったってことには、何の意味もないんだよ、って。
ましてや、それに・・・
特別な意味なんて、ないんだよって。
そんな気持ちを、隠すみたいに。
かさかさと、乾いた音を立てる包装紙で、ぎゅっと包み込んで・・・その嘘を、閉じ込めちゃいました。
「あははっ♡」
あなたの声に応えて笑う。
大丈夫。
このチョコには、嘘が詰まってる。
この嘘はマル自身にももう、どこまでが嘘かわからない。
だからきっと大丈夫。
自分に言い聞かせながら、駄目押しで冗談を付け足した。
「いつかオラたち二人で、一緒にお嫁さんに行くかもしれないずら♡」
嘘を詰め込んで、冗談で包んだ、チョコレート。
どうかあなたが、甘いところだけ、味わってくれますように・・・。
そんな内浦。