太陽を追いかけずに銀テープを追いかけてたヲタクの話をします。

まあ聞いてくれ。
いや、聞かなくてもいい。

それくらい、まあ、どうでもいいことなんだけど、言わずにはいられないことを話す。

銀テープの話。

銀テープの話と聞いて、何のことか見当もつかないという向きは少ないだろう。
ライブにおける、クライマックス的な場面で打ち上げられ、ばら撒かれるあれだ。

昨今では当たり前の光景となっており、演者のサインとメッセージが印刷されていることも少なくはない、というか最近ではほとんどである。

それの話だ。

前段。

この話をするにあたって、まずはそこまでの経緯を説明したい。
僕はアリーナ、つまりドームにおける地上部分の席にいた。
席の位置的には中央よりも前側で、かなりいい位置といえる。
ぶっちゃけるとHブロックの最前付近だ。

今考えると、銀テープが届くかどうかはかなりギリギリの位置だった。
そのときになるまで、そんなことは思いもしなかったが。

そして、ライブの最後の曲。
曲目は、『太陽を追いかけろ!』

轟音とともにばら撒かれた銀テープは、果たして、僕の席の付近がギリギリ届くか……という位置を境界として、ばら撒かれた。

ここまでが前段である。

無視される太陽。

さて、話の流れでもうお分かりかもしれないが。
このとき、僕の周囲にはゼノークが大量発生していた。
誰だよ枝折ったやつ。

ゼノークとは?

かつて覇権を誇った(たぶん)MMORPG、ラグナロクオンラインに出てくる敵キャラである。
名前に覚えはなくとも、オーク地下2階でアイテムをことごとく奪っていく(そして妙に強い)紫のあいつ、と言われればなんとなく思い出すはずだ。

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さて、ゼノークの話はよくて。

ヲタクの話だ。
周囲のヲタクはこのとき、地面に這い蹲り、散らばった銀テープをかき集めていた。

念のため確認しておくと、ライブの曲の最中である。

具体的には。

『Aqours集合!ばんごーう!』のあと、『9!』に続けて恥ずかしげもなく『10!』を叫び、『OK!Let’s go “SUNSHINE!!”』の掛け声を聞いた直後である。

信じがたいが、確かにそのタイミングだった。

『10!』と叫んだ直後に、彼らは太陽を追いかけるのを中断して銀テープを追いかけていた。
ダブルスタンダードにしてももう少し礼節というか、建前というか、取り繕うそぶりがあってもよさそうなものだ。
と、いまなら皮肉の1つも言えるのだが、その時点では……。
その、正直に言おう。

割と真面目に理解不能で怖かった。

他人の銀テープにも群がってた。

その後、ゼノークたちは周囲のゼノークたちと銀テープのトレードを始めていた。
繰り返すが曲の最中である。

なんかこう、そのときには落ち着いていたものの、どうにかなんねえかなあ、と思うばかりだ。

ヤフオクでは銀テープの相場は1000円弱。
揃えたものは20000円程度の強気な価格設定をしているようだ。

僕としては、高槻さんから視線を外さないと手に入らないものなんて要らない。
ネットで買えるような思い出も要らない。
他の宗派のヲタクを否定する気はないが、目障りなので消えてほしいなあとは思うが、いろいろとヲタクのあり方を考えさせられるテーマである。

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