国木田花丸考。マルのヨンコマ、これやっぱりすごいコンテンツだよ。
マルのヨンコマをまとめるために見直してて、やっぱこれすごいよなと思った。
(『マルのヨンコマ一覧』)
なので今日は、改めて「マルのヨンコマ」というコンテンツの持つ偉大さを考えてみる。
客観の提供
まず、マルのヨンコマの独自性として、客観であるということが挙げられる。
G’s magazineの記事は基本的に、メンバーの一人語りという形式が取られている。
これは次の2通りの解釈ができる。ひとつはAqoursのメンバーが自分たちの写真をもとに広報記事を作成しているというとらえ方。もうひとつは、Aqoursのメンバーが実際に体験していることが切り取られて読者に提供されているというとらえ方だ。
この2つは、どちらか片方が正しいというわけではなく、どちらもあてはまる記事が存在している。
前者は千歌っちが海に駆け込んで桜内が驚いたという記事、後者はルビィが犬に襲われている記事などが思いつく。
ここらへんは、存在しないものを描くということの限界があるだけなので、突き詰めても仕方ないと考えている。
それよりも大事なのは、上記のどちらの形式でも、一人語りという形式を取る以上はできることとできないことが出てくるという点だ。
例えば、メンバー間の掛け合いがないというのはわかりやすいところだろう。
そしてそのうちもっとも重要な点は、主観しかないということである。
たとえば2016年7月号のヨハネと花丸さんの勉強会では、ヨハネの学力に不安を抱く花丸さんの一人語りだ。
だが、ヨハネの視点では、友達と二人きりという慣れない状況に緊張して凡ミスを連発しているところなのかもしれない。
このように、主観しかない記事は、常になんらかの事実を省いて提供される。
省かれた部分を想像で補完することもできるが、その補完自体は想像する人の主観によってさまざまに異なってしまう。
たとえば、これがよしまる普及委員会の手の者にかかれば、緊張の理由は『いつもと違う髪型の花丸さん』ということになるのだろう。
ちょっと例をあげるだけのつもりが、盛大に脇道にそれた。
とにかく、マルのヨンコマにおいてはAqoursを客観視したものが提供されている。
これは他の諸記事とは根本的に性質が異なっており、マルのヨンコマを特別な存在にしていると言える。
漫画ゆえの表現
次に、漫画ゆえの表現方法がある。
この最たるものが、2016年11月号の千歌っちが思い浮かべたスイートルームをぶち破って飛び蹴りをかますヨハネだろう。
そもそも上級生に飛び蹴りをかましているというのがなかなかクレイジーな絵面だが、その2ページ前で上級生のキャンバスを破壊しているので、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。
また、デフォルメについては、2016年9月号のそうめんを盗み食いする千歌っちの悪い顔(ARIAのアリスを思い出す)も好きだったりする。
なんにしろ、このような漫画的表現によってできることは多い。
8コマ目のイルカに手を伸ばすマリーは、実際にサンシャイン時空で起きたことかどうかは不明だ。だが、それでもああやって描かれている。
この点についても、スナップ写真風のイラストが多い他の記事とは明確に差別化されていると言える。
ネタのニッチさ
最後にあげるのはネタのニッチさだ。
特に2015年10月号、つまり記念すべき第一回目から、いきなり花丸さんの「目が回りやすい」という要素を拾ったのは賞賛に値する。
この他にもルビィとの出会い(イメージかもしれないが)を描いた2016年1月号、麺類が苦手なことを描いた2016年9月号など、本筋のコンテンツではないからこその隙間産業として、うまくニッチを成立させている。
この他にも花丸さんに限らず、遊び心に富んだ多くのネタを提供しており、それが差別化の一因となっている。
花丸推し限定の要素
あとひとつ、花丸推しのファン限定の差別化要因が存在する。
花丸さんが描いている(ことになっている)という点だ。
また、このことは当然ながら花丸さん関連のネタが多くなるという要素もあるわけで、花丸さんの信奉者に限っては、このコンテンツの価値は計り知れないものとなる。
考えた人天才だなと思うけど、一人にフォーカスしすぎじゃない? 大丈夫? とか思ってたりもする。
むすび:ペースの不安定な企画だけど
というわけで花丸さん(竹之内トシオさん)の描くマルのヨンコマが特別だよねって話をしてみた。
その要因としては、客観であること、漫画であること、ネタがニッチであること、そしてなにより花丸さんが描いていることがあって、そしてそれらによって、マルのヨンコマというコンテンツは、明確に差別化されている。
ところで、マルのヨンコマは、2016年2月号から同年6月号の4ヶ月の間が空いたことが一度だけあったが、それ以外は概ね、3~4ヶ月連続で掲載してひと月休むというペースで掲載されている。
おそらく、花丸さんにフォーカスした内容になってしまう以上は毎号載せることが難しい、ということなのではないかな? と考えている。
なので、せめてこれくらいのペースで、これからも引き続き描いていってほしいな・・・と、願っている。
(竹之内トシオさん、いつも素晴らしい漫画をありがとうございます)