パラノマサイト FILE794 平安京エイリアン

はじめに

パラノマサイトの二次創作です。

致命的なネタバレはそんなに含みません。

が、そもそもネタがわからないと意味がわからないと思うので本編クリア後の閲覧を推奨します。

本所七不思議のJK組がメインですが一部伊勢人魚物語のネタを含みます。

呼び方すら推敲できていなくてごめんなさいという気持ちが大きい

黒鈴ミヲ

「あれ、ミヲちゃん」

あ。

まずいところを見られた。
思わず私は、持っていたその小さな板を持った手を伏せる。

「それって……」

だが、その判断はちょっと遅かったみたいだ。
約子ちゃんは、私の手をじっと見つめていた。

時折私の表情をうかがうように、ちらっと視線を顔に移動させている。
私が「そういうこと」をしているのはわかっているから、気にはなりつつも説明を待ってくれているらしい。

心遣いはありがたいんだけど……ものがものだけに、正直気まずい。
まあ、説明しちゃっても問題ないか……。

しばらくの無言の後、観念したように手の中のものを見せた。

「それ、なんだっけ。……あ、ゲームボーイ?」
「うん、あたり」

ノートくらいの厚みの、小さくて硬い、灰色の板切れ。
ゲームボーイのカセットだ。

学校では当然ながら持ち込みが禁止されているため、自然とやっこちゃんも声をひそめてくれる。

「もちろんゲームしたいってわけじゃあ……」
「うん。ないよ。絶対。」

力強くうなづく。
ゲームという新しい文化は、まだまだ世間からの理解が得られているとは言い難い。
あんな事件も起きてしまったことだし……。

ただでさえ(不本意ながら)暗いイメージを持たれがちな私が持っているのを見られたら、お互いのためにも良くないだろう。
……やっぱり暗いのかな、私は……。

「でも、そうなると……」
「……」

延々と心の中で自分への客観的な評価に悩んでいたせいで、約子ちゃんへの返答がおろそかになる。
そのせいでいらぬ誤解を与えたようだ。

「あ、もちろん、話せないことなら話さなくてもいいからね!」

腕を力強く前に突き出しながら言ってくる。

「あ、うん、ありがとう。でも……これについては話してもいいかも」
「ミヲちゃんの事情は理解して……え、いいの?」

話さない流れだと思っていたのか、意外そうな顔をして言ってくる。

「うん、こないだの件と無関係でもないから……」
「ええ……? それ逆に、聞いても大丈夫なやつ……?」
「うん、たぶん問題ないよ」

カセットについて

「これ、呪詛珠なんだよね」
「え? この……カセットって言うんだっけ? これが……呪詛珠?」
「びっくりだよね」
「え? でもこれ、お店とかで日本中で売られてるよね……ああでも、流石に全部呪われてるみたいなことはないよね? これがたまたま特別なだけで」
「だったら良かったんだけど」
「え、ちがうの……?」
「日本中で売られてるカセット、一つ一つが呪咀珠になってるそうで」
「まずいじゃん」
「うん、厳密にはまずいんだけど……ああいや、でも、実はそこまでまずくはないんだよね。その理由もちゃんとあって」
「ややこしいな。……まあ、こんなところでミヲちゃんが雑談のタネにしてるくらいだし、危険はないのか」
「微妙な評価だ……」

危険のない理由1

「呪いの記憶がない?」
「そう。こないだの事件の呪詛珠みたいな……こないだの事件?」
「それ、なかったことになってるから、呪いの記憶とか言われても知らないかも。さっきは勢いで呪咀珠とか言っちゃったけど」
「あー……まあこの話だけでもいいからわかったフリしておいて。ここの前提が崩れると約子ちゃんに話す動機がなくなるし」
「うん、よくわかんないけどわかった」

危険のない理由2

「というわけで仕切り直すと、こないだ約子ちゃんが手に入れた馬鹿囃子みたいな、記憶が流れ込んでくるほどの呪いじゃないんだ」
「へー……でも、ミヲちゃんとかが回収しなきゃいけないの?」
「そう。記憶はないんだけど、呪いの方はわずかに残ってるから」
「そういうもんなんだ」
「だからまあ、ほんとに片手間で探すだけかな。ちょっとお店とかを覗いて、置いてあったらラッキー、みたいな。犯罪になるわけでもないから、普通に購入して回収してるよ」
「でもそれ、ホントに大丈夫なの?」
「えっと、甘酒にもアルコールは入ってるけど未成年でも飲めるよね。そんな感じ」
「うん。……うん?」
「呪いの記憶が残ってないから発動方法も一般の人はわからないし、わかったところで実行した時点で大事件だから……」
「発動方法は、生きたまま土に埋める、だっけ。確かに、そんなことしてる時点で、殺意しかない……っていうか普通なら、その……もう、やっちゃってるよね」
「そうなんだよね。呪いの効果も異形化させるところだけで、穴を掘るような力があるわけではないし」
「馬鹿囃子も無茶な条件だと思ったけど、まだ便利に思えてくるよね……いや、便利とか言うのもアレだけどさ。でも、恨みの記憶がなければ殺意が増幅されることもないし、確かに、それならほとんど無害かもね」
「そうそう。ぞんざいに扱う気にはならないけど、特別怖がるようなものでもないって感じかな。それこそ、こうやって話しちゃってもいいやって思う程度に」
「そうだねぇ」
「もし約子ちゃんが他の人に言いふらしたとしても、変な夢でも見たのかなとしか思われないだろうし」
「確かにね……って、そもそも言わないって!」

呪いが発動したら?

「でも、もし呪いを行使されたとしたら大変なことになるんじゃないの? 別に、絶対にできない条件でもないし。発見されたら、土からエイリアン?が出てくることにならない?」
「うん、そこが重要なところでね。さっき呪いが弱いって言ったけど、このレベルだと、仮に発動してもじわじわとしか効かないみたいなんだよね。だからもし呪いが使われていたとしても、ちょっとご遺体の損傷が激しいな、くらいで片付けられちゃうと思う」
「そうなんだ。でも、いくらじわじわって言っても、発見が遅れたら変化が進んじゃったりするんじゃないの?」
「それが……この手の呪いって、対象が生きてる間しか効果がないみたいで」
「なるほど……とすると、土に埋められたら、どっちみち生きてられないから……」
「うん。そういう理由で、いままでにこの呪いが使われたと判断される事件は記録されてないみたい」
「ほんとに異形になってたら、さすがにニュースとかになるよね」
「オカルトブームみたいなのにのっかってすごいことになりそうだよね」
「だよねえ」

どうやってその知識を?

「あれ? でも、呪いの記憶がないんだよね? それならなんでミヲちゃんはいろいろ知ってるの?」
「お。鋭い」
「……あ、これ聞いちゃまずいやつ?」
「ううん、そんなことないよ。というか、そのへんが約子ちゃんに話しても良いかなって思った部分なんだよね」
「そっか、そういえばそこの部分はまだ聞いてなかった」
「実は、このゲームカセットの本体となる呪詛珠はすでにシンタイウチで回収されててね」
「おお。そうなんだ。有能」
「そっちは呪いの記憶もちゃんと残ってるから、それで知ってる感じかな」
「じゃあ、その呪咀珠を持ってた犯人が、呪いをコピーして日本中にばらまいたの?」
「そういうことに……なるのかな。そのへんの経緯はちょっと曖昧なんだけど」
「そうなんだ」

土御門について1

「ところで、こないだの呪咀珠に関連してる陰陽師の名前、覚えてる?」
「え? いきなり何? えっと……覚えてるよ、覚えてる。確か……土御門、なんとか」
「土御門晴曼、だね。……ねえ、土御門ってなんで土って言うと思う?」
「は?」
「なんで月とか火とか水とかじゃなくて、土なのかってこと」
「どういうこと……?」
「この平安京エイリアンって、平安京に現れたエイリアンを土に埋めて退治するっていうゲームでね」
「エイリアン?」
「宇宙人っていうのかな? 映画にもなってるやつ。とにかく、異形のバケモノなんだけど」
「異形を……土に埋める……」
「そう、呪いの効果と似てるんだよね。まあ、そんな呪いがかかってるからには、ゲームの内容を呪いに合わせて作っただけだろうけど」
「そう、そうだよね……?」
「でも、なんでそんな呪いがあったんだろうって考えると、別の見方ができてくるよね」
「え、土御門……土って……そういう意味?」
「そう、それでさっきの話に戻るの。土御門の土ってなんで土なんだろう、って」
「土御門は、平安京で、異形を土に埋めていた……?」
「うん、そういうことになっちゃうみたいで……」
「まさか、そんな……」
「土御門晴曼自身は、平安京よりはだいぶ後の時代の人だけど、そんな稼業とは合わずに出奔したらしいね。とは言っても、結局、おうちの稼業には思うところがあったみたいだけど」
「っていうと?」
「異形の呪いと、その記憶を回収して後世に伝えてるんだよね」

土御門について2

「そういえば、異形を埋めてたってだけで呪いがどうしてできたのかはまだ聞いてないっけ」
「そうだね。土御門家は平安京がなくなった後も、人知れず異形を地中に埋め続けてたんだけど……なんやかんやで最後は、土御門家自体も葬られたんだって」
「え。それって、自分たちも埋められちゃった……とか?」
「そういうことみたい。それで、土御門をなかったことにはさせないって思ったのかな。恩を仇で返された恨みだとか、長きに渡り地中に葬られ続けた異形側の恨みとか、そういうのが混じって、「土に埋まると異形化する」っていう汎用性のなさすぎる呪いになってみたい」
「それを晴曼がどうにかしたの?」
「そうだね。そのままだと呪いが無差別に撒き散らされてしまうし、土御門家のやってきたことがなかったことにされるのも思うところがあったのかも。だから呪詛珠という形にして回収したらしいよ。一種の供養だったのかな」
「呪詛珠を作った犯人、なんて言っちゃったけどそんな理由があったんだね……あれ?」
「どうかした?」
「いや、呪詛珠の本体がそうやって作られて、そのコピーをミヲちゃんとかが回収してるのはわかったけど。そもそも、どうやってコピーが作られたの?」
「うーん……さっきもちょっと言ったけど、そこはちょっと曖昧になっちゃうんだけど」
「けっこう入り組んだ話だったけど……どうせなら聞きたいかも」

呪咀珠平安京エイリアンを作った人たち

「平安京エイリアンを作ったのは、東大のTSGって人たちなんだけど」
「部活とか、サークルみたいなところが作ったってこと?」
「うん。で、そのTSGって、表向きは理論科学グループって言うんだって」
「理論科学がどうしてTSに……? 英語だとそうなるのか」
「私も正式な名前は忘れたんだけど。でももっと覚えやすい方法があるよ」
「そうなの?」
「Tsuchimikado Seiman Games」
「……いやいやまさか、そんな」
「嘘だと思う?」
「嘘であってはほしいかな」
「だよね」
「え、なにそれ。嘘なの?」
「私も知り合いに聞いただけだから」
「急に曖昧になるなぁ」
「理由はどうあってもコピーは存在しちゃってるからね。大本も回収してるし、コピーが作られた理由はもうそんなに重要じゃないんだ」
「それはそうか」

「これは完全に私の想像だけど、そもそもゲーム自体が土御門家の仕事をそのまま再現してるみたいだから、記憶の方はコピーできなかったんじゃなくて、する必要がなかったのかも知れないね」
「そういう人たちがいたことを、忘れてほしくなかった……?」
「うん。私の想像だけど。そもそも誰がそんなことをしたのかもわからないし」
「そうだねぇ……ねえ、そのゲームって遊べるの?」
「え? うん、普通に流通に乗って販売される程度にはちゃんとゲームだよ」
「やった! じゃあさ、ミヲちゃん、……」

参考資料

平安京エイリアン

1979年発売のアクションゲーム。
開発元は東京大学の、通称TSG(理論科学グループ)。
ゲームボーイ版の発売は1990年となっているため、おそらくパラノマサイトの時代よりはもう少し未来と思われる。

平安京の平和を守るため、検非違使となりエイリアンに立ち向かうアクションゲーム。

ここまでなら「エイリアン?」とはなりつつも理解できなくはないコンセプトだが、その対抗手段が「穴を掘って埋める」というまさかの手段だったためにネタゲーとしての知名度を確立している。
(個人の意見です)

そもそもゲームボーイでは現代のモンスターをハントしたりする派手なアクションは実装できるわけもない。
万が一できたとしても荒いモノクロのドットでは何が起きているか伝えることは不可能だろう。


しかし、その苦肉の策と思われた対応手段が実は事実を示すメッセージだったわけがなかった

実はこのゲームボーイカセットは呪詛珠の力を宿している。
平安京エイリアンを通じて何らかのメッセージを伝えることが目的と思われてはいる。
しかし肝心の呪いの記憶のほうは上手くコピーできなかったのか、何も伝えることはできていない。

それでもなのか、だからなのか。
もはや詳細は不明だが、流通ルートに乗って全国に販売されてしまった。
おそらく制作費回収という切実な問題もあったことは想像に難くない。

呪いの力は存在しているのでテロと言っても差し支えず、大問題でしかないのだが、発動の条件が現実的ではないというか発動した時点で普通に警察で対応できる案件でしかないため心霊対策室シンタイも問題視はしつつも積極的には対応していない状況である。
消極的な対応として、各地で任務をこなすついでに見かけたら回収しているようだ。


「異形の呪い」は、呪詛珠である平安京エイリアンを所有することで行使できる呪詛である。

条件は「対象の全身が土に埋まっていること」であり、発動すると対象はエイリアンと呼ぶのがふさわしい異形へと変貌する。
もちろん化魚の呪いと同様に生きている間しか変化せず、絶命した時点で変化が止まる。

というのが本来の呪いの力とされているが、呪いの記憶も残っていない劣化コピーに付随する呪いによる力は微弱であり、土に埋められた人間が生存できる期間程度では大した異形化は発生しない。
「埋められたことによる腐食」と判断されるレベルの損壊しか発生し得ないため、超常現象ナカゴシ案件と判断されたケースは今までに確認されていない。

そもそも土に埋められる人間は通常は生きていないし、呪いの記憶がないということは発動条件を知る機会がないということでもある。
また、呪いの効力はあくまで異形化の部分だけであり、穴を掘る部分は人力でこなす必要がある(別にショベルカーとかを使っても構わないが)ので、呪いの行使は現実的ではない。

確認されていない以前に、そもそもこの微弱な呪いが本当に発動したケースが存在しているのかは疑わしいところだ。

さらに言えば正当な理由なしに人間を土に埋めるのは生死を問わず普通に犯罪であるため、これまた普通に警察の出番でもある。
このあたりの理由から、心霊対策室シンタイの出番はないのが実情。


平安京と呼ばれる京があった。
ここで京を守る職務を担っていたのが、検非違使と呼ばれる人々である。

彼らは京に現われる異形に対抗する手段として、土に埋める方法を取っていた。
また、異形が通る四つ角に穴を仕掛けるのを基本的な戦術としたことから、土と四つ角を操る一族として、土御門の名前で呼ばれた。
現代でも四つ角には魔が潜むとか、四つ角にまつわる都市伝説が多いのは、この土御門が四つ角に多くの異形を埋葬した名残りと言われている。

当時は陰陽道を悪用する者も多く、その影響で人の形を失った者が夜の京を徘徊しており、その対策が急務とされていた。
異形と化した人間には、通常の武器はもちろん単純な陰陽パワーすらも効果は十分ではなかった。
陰陽バトルではまず攻撃を当てるために相手の動きを封じる必要があるが、その部分で陰陽パワーを利用してしまうと、相手を無力化するほどの陰陽パワーが発揮できなくなってしまう問題があった。
そこで、土御門の一族は持ち前の膂力を頼りに異形を地中に埋めることでこの問題を解決した。
これにより拘束や無力化に余計な力を使わない全力の陰陽パワーを叩き込むことで、効率よく異形を滅することができた。

時代が移り変わり、検非違使の名が廃れた後も土御門の一族は人知れず戦っていたが、あるとき悲劇が訪れる。
異形が地中に埋まりまくっているのが明るみになるといろいろよろしくないと判断した時の権力者の判断により、土御門は自らが葬った異形と同じく地中に葬られた。

異形を葬る稼業であるから、いつ敗れて自分が埋葬される側になってもよいと覚悟はしていた土御門ではあったが、このような形で葬られることは流石に予想外であった。
彼らは土御門の存在をなかったことにはさせぬとばかり、みずからの体を異形と化することで無言の抗議とした。
それまでに埋め立てられまくっていた異形たちの恨みも相まって、この地には「土に埋まると異形化する」という呪いが発生した。

ただ最後の一線で土御門家のプライドは保たれたらしく、土を掘って埋めるという一番労力のかかる部分は呪いには一切関わっていない。

平安京

794年に関連していること以外はあまり記憶にない。

もしかして最近の教科書では年が変わっていたりするのかなと思ったがパラノマサイトの舞台である1980年頃ならどっちみち794年で問題ないな、と思いつつ調べたものの特に変わっていなかった。

なお安倍晴明は2世紀ほど後の人物である。
分家……? いえ、知らない子ですね……。

陰陽師自体はこの頃すでに存在しているらしい。

セーフ。

任天堂

京都に本社を構える、言わずと知れたゲームの大家。

平安京エイリアンの舞台との奇妙な一致。
これは、果たしてただの偶然なのだろうか。

TSG

東京大学の理論科学グループの略称。

ということになっているが、その創設には京都から追放された安倍晴明の分家である土御門家の一人、土御門晴曼が関係しており、TSGという名前も本来はTsuchimikado Seiman Gamesから来ていることはあまり知られていてたまるか。

ヲタクバッシング

1989年発生なのでぎりぎりパラノマサイト時点では発生していないかもしれないがゲームボーイが存在するならばこの事件も発生してしまっているということである。

B! LINE