社畜でも安定している?そんな幻想を吹き飛ばしてくれる一冊を紹介する。

正社員が没落する

Audibleで聞いています。
2回目。
内容が複雑で、1回だと理解しきれませんでした。

貧困スパイラルという言葉が説明されています。
理解してくるにつれ、これがいま普通に働けてる人にとっても無関係じゃなさそう、ということが理解できてきました。

問題はいろいろと複雑。

この本のテーマはいろいろな方面にわたっていて、それらが絡み合っています。
例えば貧困。ワーキングプアとか言われてますが、これを少しばかり説明してみましょう。

自己責任論の弊害。

基本的には、自己責任論が横行してますよね。
派遣労働に身をやつす方が悪い、みたいな。
でもそれを自己責任で切り捨ててしまうのは問題であるということが語られています。

一体どういうことか?
というのは、切り捨てられた派遣労働者がどうなるのかを考えればわかります。

切り捨てられた人はどこへ行くか?

切り捨てられた、とは言ってもロボットではなく人間なので、生きるために動くことになります。
いよいよとなれば必死にもなります。
そして大抵の場合、その必死さは成功をつかむためではなくて悪環境に適応する方向に使われることになります。

要するに、悪い条件に目をつぶってしまうし、どんな環境でも我慢して働いてしまうわけです。
しかし本人からすれば、家賃を払えずに家を追い出されて、その日生活するお金もない、なんて状況だったりする。
となると、どんな条件でも飲んでしまうと。
さらに、雇う方も切羽詰まった人しか集まらないのを承知しているので、足元を見てどんどん条件を悪くできてしまいます。
『食えるだけマシでしょ、世の中にはもっとひどい状況の人もいるんだからこの条件でも黙って働け』と。

でも普通に生活できている人は、そんな背景があることは知りませんから、このように思うわけですね。
『そんな条件を飲む方が悪い』と。

ちなみにそう考えてしまう背景には、『悪いことをしたからその報いを受けているのだ』と思いたいという心理もあるみたいです。
悪いことをしてないのにひどい状況になっている人の存在を認めると、自分もそうなる可能性を認めることになるわけで、不安になるから……だとか。
クズみに溢れてますが、人間ってそういうものらしいです。
話が逸れました。

ルール違反をしている会社しか残らない。

ただ、責任の所在をどこに求めるかはあまり重要ではありません。
じゃあ何が重要か?
といえば、そんな悪い条件で働く人、働いてしまう人がいるということは、いわゆるブラック企業をのさばらせてしまうということこそが一番の問題となります。
ルール違反を許すことで損をするのは、ルールを守っている企業です。
ルールを守っている企業だって、いよいよとなれば生き延びるのに必死になるでしょうから、ルールを破って生き延びようとするかもしれません。
あるいはブラック企業に敗れて淘汰されてしまうことも考えられます。
そうなれば、悪い労働条件の会社が増えていってしまいます。
最終的には、労働者の首が締まっていくことになるわけです。

むすび:貧困だけじゃないよ。

というわけで、正社員が没落するという本の中で語られている問題を少しばかり取り上げてみました。
個人的に最近は派遣労働の問題をあまり聞かなくなって、悪条件の正規労働者の話をよく聞くようになったなあと感じています。
この本は2009年の発行ですけど、どうやら状況は全く変わってなさそうです。
直近だと、もうブラック企業とかもなんか一周回ってあまり聞かなくなって、「どこもきついのは一緒だ、心がけ次第だ」みたいなことすら聞くようになってきたような。

なんていうのか、すぐ足元まで亀裂が広がってる感じがしています。

実際のところ、単なる流行り廃りの問題かもしれませんし、派遣の問題が進化して正社員の問題になったのかどうかは、よくわかりません。
ただ、そこで言われるのが自己責任論、というのは変わってませんよね。
『派遣を選ぶのが悪い』が『ブラックを選ぶのが悪い』になった、みたいな。
その言葉の後には『だからその選択をしなかった自分たちは大丈夫』と続くわけですが。

僕もこの本を読むまでは、そんなふうに考えてました。
でもこの本を読んで、今まで別々の話だと思っていたものがつながってきて……『自分たちが、薄氷の上に立っている』ということが自覚できました。

ほかの陰鬱な事例。

この話以外にも、今アメリカで起きている民営化や競争社会の弊害について豊富に書かれています。

  • 年収2000万の医師が、訴訟対策で加入する保険に年間1800万を支払っており、生活保護に相当する食料の配給を受けている
  • テストの点数を上げる、その一点に絞った評価基準を教師に与えた結果、八百長や不正、学力の低い生徒にテストを受けさせないなどの行為が横行するようになった
  • 自分の理想とあまりに違う現実や、患者や生徒への自責の念から逃れるために自分を追い込み、鬱病になる人が増えている
  • 以前は安定しており、社会的意義があり、尊敬されていたはずのそれらの職業が、今では結婚を避ける理由になるほど嫌われる職業になってしまった
  • そして、日本はそれを辿ろうとしている

だとか、だとか……。

読んでていい気分になる本ではありませんが、目を背けていい問題でもないので、是非一度読んでみることをお勧めします。
冒頭でも書きましたが、アマゾンのAudibleなら朗読を聴くこともできますよ。
月額課金制で初月無料なので、ただで聞くことも可能です。

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