国木田花丸さんがわからん。

花丸さんが、好きな本を問われて上げていた、「しろばんば」と「人間の運命」。

試しにぽちって読んでいるのだが。
なかなかハードな小説である。

共通する時代背景。

1900年代初頭の、静岡の片田舎。
医学もまだ発達しておらず、祈祷が真面目に医療手段として選択肢に存在していて、裕福か裕福でないかはあまり関係なしに、流行病で死んだり、風邪を拗らせて肺炎で死んだり、出産で死んだり、食えなくて死んだり・・・が今の世の中よりも大分高確率(ノーマルガチャとプラチナガチャの違いくらい)で起こりうる環境だ。
そんななかで、「しろばんば」や「人間の運命」の1巻では、主人公の少年期が描かれている。

しろばんば

しろばんばの方は地元ではそれなりに裕福な家庭で育つ子供の小学校時代の成長を描いている。
こちらは部落の有力者なので、貧困での生きるか死ぬかという話はそこまで出てこないが、人間関係が複雑で、外に嫁に行った娘の子供を祖父の妾が一時的に預かって育てている、そんな有りさまである。

当然、発生する人間関係のしがらみなんかに囚われていて、そんななかで子供特有の無鉄砲さだとか、周囲の無理解に対する怒りだとか、端から子供扱いされる虚しさだとか、そういうのを存分に発揮して、やりこめられたり、当たり散らしたりしていくうちに、分別を学んでいく。

どんどんと一人の男として、というほどの年齢にはならないが、成長していくのは、確かに感慨深いものがある。

人間の運命

人間の運命では、まあ人が死ぬ。ばたばたと死ぬ。
貧困にあえぐ漁村の話で、一年のある時期は波が荒れて漁ができないから、ものを売ったり女の子を売ったりしてしのいでいる、そういう話だ。
人買いも人売りも当たり前にあって、主人公も便宜的にだが買われた身分にある。
正直なところ、想像も付かないが。

また貧乏以外にも宗教という問題も存在している。
天理教とかいう、この連中がまた厄介で、実は主人公の父親は宗教サイドの有力者のため、普通の勉強ではなく天理教の勉強をさせたいがために、ことあるごとにお前が貧乏で授業料を払えないのは学ぶ運命にないから云々と精神攻撃を仕掛けてくる。

こういった、宗教と貧困という、主人公の幼少期からあった、一般的には馴染みのない観念に影響を受けた性格を省みたり恥じてみたり、時に差別を受けたりしながらも、運良くいろいろな援助を手繰り寄せてどうにかこうにか学校に通い、成長していく。

というような話が1集の話なのだが、これらを受けて、国木田花丸女史は、「初めて読んだ時はワクワクして眠れなくなった」などと述懐している。
どういう感性をしているのか・・・というかしろばんばはともかく人間の運命は全7集、14巻もの分量があるため「読んだ夜」とはいつのことだろうか、とも思いつつ。
彼女の底が知れない。


ちなみに完全版というものも存在する。
先ほど挙げた全7集、14巻に加筆修正しつつ、前後に1巻を足し、さらに別巻を2巻足した全18巻構成となり、値段は2万程度から3.5万ほどに跳ね上がる。

ちなみに安く抑えることを考えた場合、完全版は個別販売もされているので、前述の全7巻+完全版の1巻、16~18巻を買うのが理論最低値である。