スクストっぽい

「お前は」
それは、唐突な問いかけだった。
あの日以来、なんとなく増えた、二人の・・・一人と一匹の・・・時間。
あたしに傾倒してどうする、とは言いつつも、それ以上のことは言わない。
むしろ、一人でいると、寂しそうにも見えるのだ。
だから、つい・・・甘えてしまう。お互いに。
そんなことを考えていたら、続く言葉を聞き流してしまっていた。
「おい、聞いているのか?」
ただでさえ強い印象の吊り目が、若干細められている。
少し顔が赤くなっていた。何を言ったんだろう。
推測で答えようかとも思ったが、彼女には通じないだろう。
そう思って、素直にもう一度言ってほしいと告げた。
彼女は憮然としながらも、再び言葉を発する。
「お前は・・・あたしを、かわいそうだと思うか?」
なんのことだ、とは思わない。
すでに彼女の秘密は共有しているし、それに、それ以外の部分ならば
およそ、その言葉ほど彼女に似合わない形容はないだろうから。
しかし。
それを聞いてどうするのだろう。
なんと答えてほしいのだろう。
自分は、どう思っているんだろう。
答えは決まらなかったが、とにかく何か言わないと、と口を開こうとする。
だが、その僅かな間で、彼女には伝わってしまったようだ。
「すまん。困らせるつもりはなかったんだ」
言ったことを後悔しているのが伝わってきた。

それで、答えは決まった。

「そうだな。あたしだって、お前の立場なら、そう思う・・・と、思う」
こちらの答えに、彼女は落ち着いた様子で頷いた。
そのあま、少しの間、どちらも話さなかった。
彼女がこちらに手を伸ばしたのと、こちらが更に口を開こうとしたのが、同時だった。
先ほどの答えをそのままにするのは忍びなかったが。
彼女がそうするからには、なにか言いたいことがあるのだろう。
ひとまず黙る。

しばらくの後。
「・・・」
何か言いかける、気配を感じた。
ふ、と顔をあげようとした頭を、ぐい、と押さえつけられる。
それ以上は抵抗せず、撫でられ続ける。
「それだけじゃないよな」
声が届く。
頷いた。
彼女にも伝わったようだ。
「・・・あたしも、そうだ。
 あたしにだって、怖いと思う気持ちは、ある。
 弱気になったら、支えてほしいと思うこともある」
撫でている手に、微かに力がこもった。
「だが、そのおかげでお前とこうして出会い、一緒に戦えている。
 そうなったのは、あたしが、あたしだったからで・・・その事自体は、
嬉しいと思っている」
手が止まった。
「どっちも、あたしの感情だ。
 どっちが本心か・・・なんてことに意味はない。
 そんなことは、周りの連中があたしを見て勝手に決めれば良い。
 あたしが、あたしの中の感情のうち、どれを優先するかで、それは変わってくるのだから」
勇気づけるように、その手のひらに頭を押し付ける。
少し、汗ばんでいるようだ。
「だから、お前も。
 ・・・色んな感情があると思う。
 でも、お前の判断をあたしは信じている。
 だから、心配するな」
再び、手が動き始める。
再び、その手に身を委ねる。

あとは、どちらも無言だった。



*「それで、人間だ」ってフレーズを使いたくて書き始めたのにつながらなかった。

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